1. 副業・兼業の基礎知識と現状
副業・兼業とは?日本における定義
副業(ふくぎょう)とは、本業以外に行う仕事や収入源のことを指します。例えば、会社員が勤務時間外にアルバイトやフリーランスとして働く場合などが該当します。一方、兼業(けんぎょう)は、2つ以上の仕事を並行して行うことを意味し、農業従事者が会社で働きながら農作業も行うケースなどがあります。
副業と兼業の違い
項目 | 副業 | 兼業 |
---|---|---|
意味 | 本業以外の仕事で収入を得る | 複数の仕事を同時に行う |
例 | 会社員+ライター | 農家+会社員 |
日本で副業・兼業が注目される背景
近年、日本では「働き方改革」の推進や終身雇用制度の見直し、テレワークの普及などにより、副業・兼業への関心が高まっています。政府も2018年に「モデル就業規則」を改正し、副業・兼業を原則容認する方向性を示しました。これにより、多くの企業でも副業解禁の動きが広がっています。
なぜ今、副業・兼業が求められるのか?
- 収入源を増やすことで生活の安定につながる
- 自分のスキルや経験を広げるチャンスになる
- 新しい人脈やキャリア形成につながる可能性がある
- 社会全体で多様な働き方への理解が進んでいる
最新データから見る副業・兼業の現状
総務省統計局によると、2023年時点で副業・兼業をしている人は全国で約480万人とされています。また、20代〜40代の若い世代を中心に副業への関心が高まっています。特にIT関連やクリエイティブ系、オンラインサービスなど場所や時間に縛られない副業が増加傾向です。
年代別副業実施率(2023年) | 実施率 |
---|---|
20代 | 15% |
30代 | 13% |
40代 | 11% |
50代以上 | 7% |
まとめ:副業・兼業は今後さらに拡大へ
このように、日本でも副業・兼業は一般的になりつつあります。しかし、副業を始める前には法律や企業ごとのルールを理解することがとても重要です。次回は具体的な法的なポイントについて解説していきます。
2. 労働基準法と副業の関係
労働基準法とは?
労働基準法は、日本国内で働くすべての労働者を守るための法律です。主に「労働時間」「休日」「残業」など、働く人が安心して働けるルールが定められています。副業・兼業を始める場合も、この法律をしっかり理解しておくことが大切です。
副業時の労働時間管理について
副業・兼業を行う際、本業と副業の両方の勤務時間を合計した「通算労働時間」が重要になります。労働基準法では、1週間あたり40時間(原則)を超えて働いてはいけないとされています。たとえば、本業で週30時間、副業で週15時間働いた場合、合計45時間となり、5時間分が法定労働時間を超えるため注意が必要です。
区分 | 本業の労働時間 | 副業の労働時間 | 合計労働時間 | 注意点 |
---|---|---|---|---|
例1 | 30時間/週 | 8時間/週 | 38時間/週 | 問題なし |
例2 | 35時間/週 | 10時間/週 | 45時間/週 | 超過分は残業扱い |
休日管理にも要注意!
労働基準法では「毎週最低1回」または「4週間で4回以上」の休日を設けることが義務付けられています。本業・副業どちらも勤務がある場合、休日が取れているかどうか自分でしっかり確認しましょう。もし休日が取れていない場合、体調管理や法律違反につながる可能性があります。
休日取得チェックポイント
- 本業・副業ともに出勤日を記録する
- 1週間に必ず1日休みがあるか確認する
- 連続勤務になっていないか見直す
残業(時間外労働)の考え方
本業と副業を合わせて法定労働時間(原則1日8時間、1週40時間)を超えた場合、その超過分は「残業」となります。残業には割増賃金(通常より高い時給)が必要です。ただし、本業と副業が別々の会社の場合、それぞれの会社で残業代が支払われるとは限りません。ご自身で労働状況を把握し、不明な点は各会社や専門家に相談しましょう。
状況例 | 残業になるか? | 割増賃金支払先 |
---|---|---|
同じ会社内で複数職務を兼任 | 残業対象になる | 勤務先企業から支払いあり |
別会社で本業+副業を掛け持ち | 原則各社ごとの判断 ※通算して超過の場合、自身で管理必要 |
-(自己管理・相談推奨) |
まとめ:自己管理が大切です!
副業・兼業を始める際には、労働基準法に沿って自分自身でも労働時間や休日、残業などの管理をしっかり行いましょう。不安な場合は、総務担当や専門家に早めに相談することもおすすめです。
3. 就業規則と会社の許可
副業・兼業を始める前に、まず確認しておきたいのが自分が所属する会社の就業規則です。日本の多くの企業では、就業規則の中で副業や兼業について何らかのルールが定められている場合があります。特に「副業禁止規定」や「届出・許可制」の有無は重要なポイントです。
副業禁止規定とは?
一部の会社では、社員が本業以外の仕事を行うことを禁止している場合があります。このような「副業禁止規定」がある場合、会社に無断で副業を始めてしまうと懲戒処分などのリスクが発生することもあります。必ず自社の就業規則を確認しましょう。
届出や許可制について
最近では、副業自体を禁止せず、「事前に会社へ届出または許可申請が必要」としている企業も増えています。これにより、会社は従業員の労働時間や競合他社への就労などを管理しています。下記の表で代表的なパターンをまとめました。
副業・兼業に関する会社の主なルール | 内容 |
---|---|
全面禁止 | 一切の副業・兼業を認めない(厳格な規定) |
条件付き許可 | 事前に会社へ申請し、許可された場合のみ可能 |
届出制 | 副業開始前に会社へ届出のみ必要(許可不要の場合も) |
自由(原則自由化) | 特段の制限なし。ただし秘密保持義務などは遵守が必要 |
確認すべきポイント
- 自社の就業規則や社内ポータルサイトで「副業」に関する項目をチェックすること。
- 不明点は人事部門や上司に相談し、トラブルを未然に防ぐ。
- 届出や許可申請が必要な場合は、所定の手続き方法や書類も事前に確認しておく。
まとめ:慎重な事前確認が大切
副業・兼業を始める際には、自分自身だけでなく会社との信頼関係も大切です。ルールを守りながら安心して新たなチャレンジを始めましょう。
4. 情報漏洩・利益相反のリスク管理
副業で気をつけたい情報漏洩とは?
副業や兼業を行う際、最も注意が必要なのが「情報漏洩」です。会社で得た機密情報や顧客情報、技術的なノウハウなどを、うっかり副業先や第三者に伝えてしまうと、大きなトラブルにつながる恐れがあります。日本の多くの企業では、就業規則や誓約書で秘密保持義務(NDA)が定められており、違反すると懲戒処分や損害賠償請求の対象になることもあります。
情報漏洩リスクを回避するポイント
リスク要因 | 対策方法 |
---|---|
社内資料・データの持ち出し | 会社の許可なく資料やデータを外部に持ち出さない。クラウドサービス利用にも注意。 |
副業先への知識・技術の流用 | 会社独自のノウハウや未公開技術は、副業先で使わないようにする。 |
SNS等での無意識な発言 | 職場や取引先の詳細、進行中のプロジェクト内容をSNS等で発信しない。 |
利益相反(コンフリクト・オブ・インタレスト)について
利益相反とは、自分が所属する本業企業と副業先企業が競合関係にあったり、自分の立場によってどちらか一方に有利な判断をしてしまう状況を指します。日本企業では「競業避止義務」として定めている場合が多く、同業他社で働くことや、関連するビジネスを副業で行うことは禁止されているケースも少なくありません。
利益相反リスク管理チェックポイント
チェック項目 | 確認すべき内容 |
---|---|
就業規則の確認 | 副業・兼業に関する禁止事項や申請手続きを必ずチェックしましょう。 |
副業先の事業内容 | 本業と競合しないか、類似サービスを提供していないか調べましょう。 |
利害関係者への相談 | 迷った場合は人事担当者や上司に相談し、トラブル防止に努めましょう。 |
まとめ:リスクを回避し安心して副業するために
副業・兼業を始める前には、本業企業との契約内容や就業規則をしっかり確認し、「情報漏洩」や「利益相反」などのリスク管理を徹底しましょう。ルールを守ることで安心して副業ライフを楽しむことができます。
5. 税金・社会保険の取り扱い
副業収入と確定申告について
副業や兼業で得た収入が年間20万円を超える場合、確定申告が必要です。本業の給与所得だけではなく、副業で得た収入も合算して税金を計算する必要があります。会社員の方は、普段は年末調整だけで済みますが、副業収入があると自分で手続きを行う必要が出てきます。
確定申告が必要なケース
区分 | 必要な手続き |
---|---|
副業収入が20万円以下 | 基本的に確定申告不要(例外あり) |
副業収入が20万円超 | 確定申告が必要 |
住民税のポイント
副業で得た収入にも住民税がかかります。会社に副業がバレる原因の一つとして、住民税の増加があります。副業分の住民税を自分で納付する「普通徴収」を選択することで、会社への通知を避けることもできます。
住民税の納付方法比較表
納付方法 | 特徴 | 会社に知られる可能性 |
---|---|---|
特別徴収(給与天引き) | 本業の給料から天引きされる | 高い |
普通徴収(自分で納付) | 自分で納付書を使って支払う | 低い |
社会保険料の取り扱いについて
会社員の場合、本業の給与に基づいて社会保険料が計算されます。副業先でも給与所得として一定額以上を受け取った場合は、副業先でも社会保険加入義務が発生することがあります。ただし、多くの場合は本業側のみで社会保険料を支払います。個人事業主として副業をする場合は、国民健康保険や国民年金に加入するケースもあります。
社会保険料の扱い早見表
副業形態 | 社会保険の取り扱い |
---|---|
アルバイト・パート(一定条件未満) | 本業のみで加入・負担 |
アルバイト・パート(週20時間以上等、要件満たす場合) | 副業先でも加入義務あり(ダブルワーク) |
個人事業主として副業 | 国民健康保険・国民年金に加入(本業が非正規雇用の場合など) |