副業・兼業の定義と日本における現状
副業・兼業とは、本業である会社の仕事以外に、別の職務や事業を行うことを指します。具体的には、平日や休日の空き時間を利用してアルバイトやフリーランス活動、小規模な事業運営などが含まれます。近年、日本では働き方改革の推進を背景に、副業・兼業を認める企業が増加傾向にあります。政府も「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、多様な働き方を後押ししています。
副業・兼業の基本的な意味合い
副業(ふくぎょう)は本業以外の仕事全般、兼業(けんぎょう)は本業と並行して複数の職を持つことを主に指します。両者は似ていますが、以下のような違いがあります。
用語 | 意味 | 例 |
---|---|---|
副業 | 本業以外の収入源を持つこと | 平日夜や週末にコンビニでアルバイト、ネットショップ運営等 |
兼業 | 本業と同等またはそれ以上に力を入れて並行して行う仕事 | 会社員として働きながら農家や家業にも従事等 |
日本全国での普及状況
厚生労働省によると、2020年以降副業・兼業を容認する企業は増加傾向にあり、特にIT系やベンチャー企業では柔軟な就労形態が広まっています。一方で伝統的な大企業では依然として制限が多い場合もあります。
国の方針について
政府は「働き方改革実行計画」や「副業・兼業ガイドライン」の整備によって、副業・兼業を推進しています。これにより、個人のキャリア形成や収入増加、人材流動化が期待されています。ただし、実際には各社ごとの就業規則による制約も多いため、注意が必要です。
2. 就業規則での副業・兼業の取り扱い
日本の多くの企業では、従業員が副業や兼業を行う際のルールが就業規則に明記されています。会社ごとに規定内容は異なりますが、一般的には以下のような項目が含まれています。
主な就業規則の内容
規定項目 | 内容例 |
---|---|
副業・兼業の可否 | 原則禁止/事前申請制/条件付き許可 など |
承認手続き | 上長への申請書提出・人事部門による審査 |
禁止事項 | 競合他社での就労、公序良俗に反する仕事 など |
報告義務 | 副業開始・終了時の届出が必要 |
承認申請と遵守すべき手続き
副業や兼業を希望する場合、まずは会社の就業規則を確認し、定められた手続きに従うことが重要です。多くの場合、次の流れで進められます。
- 副業・兼業を希望する旨を直属の上司または人事部門へ相談
- 所定の申請書(副業申請書など)を提出
- 会社側で内容を審査し、承認または不承認を通知
注意点
- 無断で副業を始めると懲戒処分の対象となる場合があります。
- 就業時間外であっても、本業に支障をきたさないよう配慮が必要です。
このように、副業・兼業に関する就業規則や手続きを遵守することで、トラブルやリスクを回避しながら安心して副収入を得ることができます。
3. 副業・兼業を行う際の法律上の注意点
会社員が副業や兼業を始める際には、単に会社の就業規則だけでなく、労働基準法など日本の法律にも十分注意する必要があります。ここでは、副業・兼業に関して特に気をつけるべき法的ポイントについて整理します。
労働基準法の遵守
まず、副業・兼業をする場合でも、労働基準法による「労働時間の上限」や「休日の確保」は適用されます。複数の仕事を掛け持ちすることで、1週間の労働時間が法定労働時間(原則40時間)を超えてしまうことがあります。自身で管理し、健康への配慮も忘れずにしましょう。
項目 | ポイント |
---|---|
労働時間 | 本業と副業の合計が週40時間以内か確認 |
残業手当 | 副業先でも所定労働時間超過分は支給対象となる場合あり |
健康管理 | 長時間労働による健康被害防止が重要 |
秘密保持義務と競業避止義務
会社員には在籍中、就業規則や雇用契約に基づき「秘密保持義務」や「競業避止義務」が課せられている場合が多くあります。これらに違反すると、懲戒処分や損害賠償請求につながるリスクがあります。
秘密保持義務とは
勤務先で知り得た顧客情報や機密情報を副業先や第三者に漏らすことは禁止されています。また、副業先で本業のノウハウを流用することも問題になります。
競業避止義務とは
自社と同じ事業内容・競合となる企業で副業を行う場合、「競業避止義務」に違反する可能性があります。これにより、本業の信頼低下や法的トラブルにつながるケースもあるため注意が必要です。
義務名 | 主な内容 | 違反時リスク |
---|---|---|
秘密保持義務 | 社内情報・顧客情報等の漏洩禁止 | 懲戒解雇、損害賠償請求等 |
競業避止義務 | 競合他社での副業・兼業禁止(就業規則等で規定) | 訴訟リスク、信用失墜等 |
その他の注意点
また、副業収入については所得税や住民税の申告義務も発生します。不正な申告や無申告はペナルティの対象となるため、確定申告も忘れずに対応しましょう。
4. 会社への申告・承認手続きの流れ
副業・兼業を始める際、会社の就業規則や社内ルールに従い、事前に申告および承認を得ることが一般的です。ここでは、一般的な申告・承認手続きの流れについてご紹介します。
申告・承認手続きの一般的なステップ
ステップ | 内容 | ポイント |
---|---|---|
1. 就業規則の確認 | 自社の就業規則や副業・兼業に関するガイドラインを確認します。 | 禁止事項や条件をよく理解することが重要です。 |
2. 会社への申請書提出 | 指定の様式(申請書)に必要事項を記入し、上司または人事部門に提出します。 | 副業内容、勤務時間、開始予定日などを正確に記載します。 |
3. 会社による審査 | 会社が副業内容や就業時間を確認し、利益相反や労働時間超過などのリスクをチェックします。 | 場合によっては追加資料提出や面談が求められることもあります。 |
4. 承認・却下通知 | 審査結果が通知されます。承認された場合は正式に副業・兼業が可能になります。 | 却下された場合は理由を確認し、必要なら再調整します。 |
5. 定期的な報告・見直し | 副業開始後も定期的に状況報告や見直しが求められる場合があります。 | 会社の指示に従い適切な管理を行うことが大切です。 |
社内でよく使われる用語例
- 届出(とどけで): 副業開始前に必ず提出する書類や手続き全般を指します。
- 許可制(きょかせい): 会社の承認が必要な制度であり、無断で副業すると懲戒対象になる場合もあります。
- 兼業規定(けんぎょうきてい): 副業・兼業に関する細かなルールや条件をまとめた社内規程です。
注意点とアドバイス
事前申請は必須: 日本企業では、副業・兼業を無断で始めると信頼関係の崩壊や懲戒処分につながることがあります。必ず規定通りに手続きを行いましょう。
情報は正確に: 申請時には仕事内容や勤務先、時間帯などできるだけ具体的かつ正確な情報を記載しましょう。
疑問点は相談: 不明点がある場合は早めに人事部門などへ相談することでトラブル防止になります。
5. 副業・兼業を行う際のリスクと対応策
本業への影響リスクとその対応策
副業や兼業を始める際、最も懸念されるのが本業への影響です。勤務時間外に副業を行ったとしても、疲労や集中力の低下により本業のパフォーマンスが落ちてしまう場合があります。また、副業のスケジュール管理が不十分だと、本業の残業や急なシフトに対応できなくなることもあります。
対策方法
- 就業規則で副業可能な時間帯や日数を事前に確認する
- スケジュール管理アプリ等を活用し、無理のない範囲で副業を行う
- 定期的に自身の体調や仕事の進捗を見直す
健康管理リスクとその対応策
長時間労働による睡眠不足や過労は、健康被害につながる恐れがあります。特に日本では「過労死」など健康問題が社会問題となっているため、自身の健康管理は非常に重要です。
リスク | 予防策・対応策 |
---|---|
睡眠不足・疲労蓄積 | 十分な休息時間を確保し、定期的に生活リズムを見直す |
ストレス増大 | 趣味や運動などでストレス解消を心掛ける |
情報漏洩リスクとその予防策
本業で得た機密情報や取引先情報を、副業先で誤って使用してしまうことは法的トラブルにも発展します。日本企業では「競業避止義務」や「秘密保持契約(NDA)」が厳しく設定されている場合が多いため、注意が必要です。
主な予防策
- 本業と副業で取り扱う情報を明確に区別する
- 会社の就業規則や契約書内容を再確認する
- 疑わしい場合は人事部門等へ相談する
まとめ:リスク管理が成功のカギ
副業・兼業は収入アップやスキル向上など多くのメリットがありますが、リスク管理が不十分だと本末転倒になりかねません。自身と会社双方にとって安心して副業・兼業を続けられるよう、慎重な準備と定期的な見直しを心掛けましょう。
6. 税金・社会保険面での留意点
副業・兼業を行う場合、本業以外から得た収入についても税金や社会保険の取り扱いに注意が必要です。会社員として勤務している場合、通常は給与所得に対して源泉徴収が行われますが、副業による収入がある場合は自分で確定申告を行う必要があります。
副業収入と税金の関係
副業による所得(年間20万円を超える場合)は原則として確定申告が必要です。下記の表に概要をまとめました。
区分 | 対応方法 |
---|---|
副業所得が20万円以下 | 確定申告不要(※例外あり) |
副業所得が20万円超 | 確定申告が必要 |
住民税の注意点
副業所得がある場合、住民税にも反映されます。会社に副業が知られたくない場合、「住民税の納付方法」を「自分で納付(普通徴収)」に設定することをおすすめします。ただし、自治体によって取り扱いが異なるため、事前に確認しましょう。
社会保険の取り扱い
本業で社会保険に加入している場合、副業先での加入義務は原則ありません。しかし、副業先でも一定条件を満たすと「ダブルワーク」となり、双方で社会保険への加入対象となるケースもあります。特に週20時間以上勤務や月額賃金8.8万円以上の場合などが該当します。
状況 | 社会保険加入の有無 |
---|---|
本業のみで基準達成 | 本業側のみ加入 |
本業・副業とも基準達成 | 双方合算し加入(総報酬月額制) |
確定申告のポイント
副業収入には経費を差し引くことができます。帳簿や領収書をしっかり管理し、正確な申告を心掛けましょう。また、不明点は税理士や専門機関へ相談することも重要です。
このように、副業・兼業時には税金や社会保険について十分な理解と準備が不可欠です。経済的なリスクを避けるためにも、制度や手続きについて事前に調べておきましょう。